家族信託の相談を弁護士や司法書士にするメリットとは?専門家を選ぶポイント解説

2021/4/20

2021/06/20

この記事の監修

齊藤潔

さいとう司法書士・行政書士事務所
司法書士・行政書士・民事信託士
齊藤潔

開業以来、一貫して相続・成年後見など家族に関する法務に携わる。
家族信託や遺言など生前からの対策が必要な方への支援を行っている。

家族信託とは、信頼できる家族や親族に自分の財産(お金や土地・建物など)を託して管理または処分を任せるための仕組みです。家族信託は相続・財産管理の新しい形であるため、最新の知識を持っている弁護士や司法書士などの専門家に相談することで手続きがスムーズに進めることができます。

今回は家族信託の相談を弁護士や司法書士にするメリットや専門家を選ぶ際のポイントについて説明していきます。

Contents

弁護士や司法書士に家族信託の相談をする3つのメリット

弁護士や司法書士に相談をした場合、どのようなメリットがあるのでしょうか?3つのメリットに分けて説明いたします。

(1)財産管理や相続について総合的に相談できる

司法書士などの専門家は遺言や成年後見など家族信託と関連性の高い分野の知見も持っているため、総合的に相談をすることができます。

そもそもご自身のケースが、家族信託に向いていない場合もあると思いますので、広い視点で検討してもらうとよいです。例えば、父親の財産管理に家族信託を使えないかと考えたとしても、既に認知症が進んで判断能力が無くなってしまっていれば、家族信託ではなく成年後見制度をということになります。

また、家族信託はすぐにできるものではないので、信頼できる専門家を探して、継続的に相談していくとよいでしょう。

 (2)信託契約書の作成から登記まで一貫して相談できる

家族信託をするには信託契約書の作成が必要になりますし、信託財産が土地や建物などの不動産の場合、信託登記の申請も必須となります。

登記とは、第三者が不動産面積や住所、名義人などの不動産情報を確認できるよう登録する制度のことです。

もしもあなたが、信託契約書を自分で書こうとしているのであれば、相談先は弁護士か司法書士などの法律の専門家に相談するのがよいでしょう。

専門家に相談することで、自分で信託契約書の作成するのは無理だと思えば、信託契約書作成から全て任せることもできるので、自身の手間を大きく省くことができます。契約後に必要な手続き等のアドバイスも受けられることが多く、自身で手続きを進めるのが不安という方は専門家に相談するとよいでしょう。

(3)常に最新の情報をチェックしている

弁護士や司法書士などの専門家は、最新の情報に常にアンテナを張り、得た情報や知識を信託契約に組み入れています。専門家ならではの視点から法制度や情勢の流れをとらえているため、専門的なアドバイスやサポートを受けることが期待できます。

家族信託の専門家を選ぶ4つのポイント

次に家族信託について相談する専門家を選ぶ際のポイントについて説明します。

(1)家族信託を取り扱った経験が多いか

まずは家族信託を取り扱っている件数が多い専門家を選びましょう。経験が多い専門家ほど相談したときに安心を感じることができます。

家族信託は比較的新しい仕組みのため、注目され始めたのもごく最近のことになります。そのため少しでも家族信託に関する知識を持っている専門家に相談するメリットは大きいです。問い合わせの際に、可能であれば家族信託の相談実績などを聞いてみてもよいでしょう。

(2)家族信託が専門で知識が豊富であるか

家族信託に関わらず、士業の相談において重視してほしいのが専門性の高さになります。どの分野の専門家にも得意不得意があるため、その見極めが重要になります。

「専門知識が豊富である」と判断するための材料としては、実績や著書、または所有資格などがあげられます。家族信託に関しては「家族信託専門士」や「民事信託士」という資格があるため、この資格を所持しているかどうかも一つの指標となりそうです。

(3)家族信託を開始した後のアフターフォローも可能か

家族信託を開始するまでのサポートはもちろんですが、開始した後の継続的相談や信託事務のサポートについても対応してくれるか、という点も相談する専門家を選ぶときのポイントになります。

いくら実績や知識が豊富であっても、返信が遅いなどのコミュニケーションにおける不安がある場合は別の専門家にお願いをした方が良いかもしれません。

自分の財産の管理などを任せることになりますので、長く安心してコミュニケーションを取れそうな人物であるか、契約後も親身になって相談に乗ってくれそうか等をイメージして決めるとよいでしょう。

(4)専門外の分野にもネットワークがある

家族信託についての知識や実績はもちろん必要ですが、他分野の専門知識が必要となる場合もあります。家族信託には、法律、税金、不動産などの専門家と連携しながら取り組んでいくのが一般的でもあります。特に税理士との連携は必要になることが多いです。

そのため、家族信託を相談する専門家が、どのようなネットワークと連携して契約を進めていくのかを確認しておくとベストです。

以上、相談する専門家を選ぶ際のポイントとなりますが、中には「家族信託コンサルティング」を名乗り、低品質なサポートを行う業者も見られるようです。話をしていて違和感を覚えたり、明らかに専門性の低い内容だと感じたりしたら第三者や別の専門家に相談してみるとよいでしょう。

家族信託の専門家に相談できる内容

家族信託の専門家には以下の内容についての相談が可能です。

(1)家族信託に適しているかどうか

遺言や任意後見など他の制度と比較して、家族信託が本当にベストなのかはよく検討する必要があります。何のための信託なのか、信頼できる家族がいるのか、信託できる財産なのか、など基本的なことの確認が重要です。

家族信託は、一般的に時間も費用もかかることが多いので、しっかりとそのメリット・デメリットを確認してから前に進みましょう。

(2)家族信託の内容に関して

信託契約の内容をどのようにしたらよいのか、そうすることでどのようなメリット・デメリットがあるのか、について専門家と一緒に考えていくことができます。

例えば、家族信託では財産管理をする期間については、以下のような選択肢が考えられます。

  • ・生前から亡くなるまでの財産管理をする
  • ・亡くなっても終了せず、子の代、孫の代までの財産管理を継続する
  • ・今すぐにではなく、条件付きにして認知症になって判断能力が低下したら、財産管理を始める

これらのどれを選ぶかについて、また管理についてどのような体制で行っていくのかについてなどを相談することが可能です。

(3)遺留分に関して

遺留分とは、相続財産の中で相続人(兄弟姉妹は除く)に最低限の取り分を保証する制度のことです。遺留分を不当に侵害する信託の場合は、無効とされる可能性もあるため、遺留分の検討も必要となります。

このような内容について家族信託において専門家に相談できます。

家族信託の主な相談事例

事例①

認知症対策のための家族信託の事例

事例②

障害のあるお子様のための家族信託の事例

事例③

実家の空き家対策のための家族信託の事例

家族信託を士業に相談した場合の費用の相場

(1)弁護士の相談費用相場

弁護士に家族信託の相談をした場合の費用は、依頼する事務所によって変わります。多くの場合は初回相談無料、2回目以降から費用が発生するパターンで「1時間10,000円」といった料金が定められています。

相場は30分5,000~10,000円あたりとなっており、実際に依頼すれば報酬が別途で発生します。

一般的には司法書士よりも費用が高くなるケースが多いですが、法律に関する専門的な知識で対応してくれるので安心感が強いことでしょう。

(2)司法書士の相談費用相場

司法書士に家族信託について相談する場合の費用も、事務所によって異なりますが、初回相談無料の事務所が多いようです。

司法書士の特徴として、契約書作成から不動産登記まで一貫して行うことができるので、外注しないで済む分、依頼した場合の費用が安くなると思われます。

(3)実際に依頼した場合の費用相場

相場としては家族信託のコンサルティングから手続きまですべて依頼して、不動産のない場合で、最低でも30万円はかかると思っておいた方がよいでしょう。

どちらの場合も財産評価額に応じて手数料が発生するケースが多いため、実際の費用については相談する事務所へ問い合わせるのがよいでしょう。

家族信託のおおまかな手続きの内容

家族信託の手続きは専門家に相談・依頼することが多いですが、個人での手続きも可能ではあります。家族信託をするには「信託契約」「遺言信託」「自己信託」の3つの方法がありますので、それらの手続きについて説明していきます。

(1)信託契約

信託契約は、家族信託の代表的なパターンです。委託者(財産を託す人)と受託者(財産を託される人)が契約をする方法です。

信託契約による家族信託では、まず信託の目的を決めます。目的が決まったら信託契約の内容について「どのような方法で」「誰が受託者になるのか」などを具体的に決定していきます。これらの内容に基づいて「信託契約書」を作成します。

信託契約書を締結した後に、財産名義を委託者から受託者に移行するという流れとなります。

信託契約に関しては、契約完了後にすぐに信託を始めることができるため、最も一般的な方法となります。

(2)遺言信託

遺言信託とは遺言書の中に信託をするということを記す方法です。そのため遺言信託は遺言者が死亡した後に、信託が始まるという流れになります。

委託者が生きているうちは、委託者自身で財産を管理することになります。

遺言者の意思が尊重されることになりますが、事前に家族によく相談して合意を得ておかないと遺言が実行されない可能性もありますので注意が必要です。

(3)自己信託

自己信託とは、委託者自身が受託者となり、他の人のために財産を管理する方法です。委託者と受託者が同一人物であり、単独行為であるという点で他の信託方法とは大きくことなります。

まとめ 家族信託を相談する前に考えておくべきこと

家族信託を専門家に相談する前に以下のことについて考えをまとめておきましょう。

  • ・信託の目的は何か
  • ・誰に委託するか
  • ・信託する財産は何か
  • ・受託者は本当に信頼できるか

これらの目的や受託者となる人を明確にしておくことで、具体的なイメージを持った相談がしやすくなりますし、専門家からの的確なアドバイスを受けやすくなります。

家族信託は大切な財産にかかわるものでありますし、その適用を間違えれば家族間でのトラブルに繋がってしまうこともあります。個人で悩んでしまう前に、ぜひ信頼できる専門家に相談をしてみてください。

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