家族信託の費用の相場はどれくらい?専門家に依頼した場合の費用を解説。

2021/5/12

2021/11/15

この記事の監修

齊藤潔

さいとう司法書士・行政書士事務所
司法書士・行政書士・民事信託士
齊藤潔

開業以来、一貫して相続・成年後見など家族に関する法務に携わる。
家族信託や遺言など生前からの対策が必要な方への支援を行っている。

Contents

1.はじめに

認知症による資産凍結の問題が認識されるようになり、家族信託によって自分の老後の財産管理に備えようという人が増えています。
これから検討したいと思われる方も多いのではないでしょうか。
そこで、今回は皆さんがまず一番気になる費用について解説していきます。

2. 家族信託の費用の概要

家族信託をする場合には、次のようなステップを踏む必要があり、専門家に依頼する場合はそのステップ毎に費用が発生します。
① 家族信託の設計のコンサルティング
② 契約書の作成
③ 公正証書作成
④ 不動産登記費用

3.家族信託の設計のコンサルティング

依頼者の家族状況、財産状況、健康状態、家族それぞれの意向などをヒアリングし、最善の家族信託をご提案するための専門家報酬です。
信託財産の額に応じて報酬を定めるのが一般的で、次のように定められていることが多いです。

信託財産額 報酬(消費税別)
1億円未満の部分 信託財産額の1%(最低報酬額30万円)
1億円~3億円の部分 信託財産額の0.5%

信託財産が1億円未満の場合、1%の報酬が相場になっていますので、仮に5000万円の財産を信託するとなると、50万円の報酬がかかることになります。
それでは1000万円の財産を信託すると10万円で済むかというと、そうではなく、最低報酬額が定められていますので、仮に最低報酬額が30万円の場合、信託財産額が1000万円でも30万円が報酬ということになります。
信託財産が2億円の場合、1億円までが1%で100万円、1億円から2億円までが0.5%で50万円、合計すると150万円というような計算をします。

4.契約書案の作成

前のステップで作成した家族信託の設計内容に沿って、契約書案を作成するとともに、公証人との連絡調整を行います。

5.公証人の公正証書作成手数料

信託財産額に応じて公証人の手数料がかかります。基本の手数料は次のとおりです(一部抜粋)。これに用紙代などの加算があります。3~10万円の範囲に収まることが多いでしょう。

目的の価額 手数料
1000万円を超え3000万円以下 23000円
3000万円を超え5000万円以下 29000円
5000万円を超え1億円以下 43000円
1億円を超え3億円以下 4万3000円に超過額5000万円までごとに1万3000円を加算した額
3億円を超え10億円以下 9万5000円に超過額5000万円までごとに1万1000円を加算した額

日本公証人連合会のホームページから抜粋

6.不動産の登記費用

(1)司法書士報酬

不動産登記は司法書士に依頼することになりますので、その報酬です。10万円~15万円であることが多いです。
物件の評価額が高額であったり、物件数が多かったり、複数の法務局に申請しなければならない場合は、報酬が加算される場合があります。

(2)登録免許税

忘れてはならないのが登録免許税です。土地の場合、固定資産評価額の0.3%、建物の場合は0.4%かかります。
例えば、土地2000万円、建物1000万円を信託すると、6万円+4万円で10万円の登録免許税がかかります。

7.その他の初期費用

(1)口座開設手数料

家族信託では、お金の管理を信託口口座という家族信託の専用の口座を作ることが望ましいです。これは、「委託者 甲野太郎 信託口受託者 乙野花子」などの名義で作られる口座で、受託者個人の財産と信託財産とをはっきりと分別するための口座です。信託口口座を開設してくれる金融機関は限られている上、口座開設手数料が5万円~10万円かかります。

8.信託契約後にかかる継続的費用

(1)受託者等(受益者代理人、信託監督人)の報酬

家族信託がスタートしてから費用がかかる場合もあります。専門家を信託監督人や受益者代理人に選任した場合は継続的に報酬を払う必要がありますし、受託者に報酬を払う場合もあります。

(2)税理士報酬

収益物件を信託した場合など、毎年税務署へ届け出をする必要がありますので、これを依頼した場合は税理士報酬がかかります。確定申告は別途必要となりますので、まとめて税理士に依頼するとよいでしょう。

9.費用を抑えるコツ

(1)見積を比較する

同じような報酬表を使っているようでも解釈はそれぞれの専門家によって異なる場合があります。実際に見積書をとって比較して、費用の合計を比較してみましょう。
ただし、費用だけで決めるのではなく、家族に対するヒアリングを丁寧に行うか、説明がわかりやすいか、その後のフォローもしっかりしてくれるかなどの要素も総合的に考慮して決めましょう。

(2)小さな額で始める

委託者が比較的若い場合など時間的な余裕があるのであれば、いきなり全財産を預けるのではなく一部の財産を信託して後から追加信託するという方法もあります。これは、信頼できると思っていた受託者がそうではなかった場合など、リスク軽減にもなります。

(3)自分でできることは自分でやる

委託者がまだ若い場合など、今すぐ必要なわけではない場合も多いので、自分で勉強して家族信託をやるのもよいでしょう。その場合でも専門家のチェックを受けることはお勧めします。
遺言書の必要性は感じていたのだけど、いつまで経ってもやらずに結局後々心配していた争続問題が発生してしまうということはよくあります。遺言よりも難しい家族信託であればなおさらです。
自分でやる場合は、いつまでに信託すると期限を決め、できなければ専門家に頼むのがよいでしょう。

10.注意点

(1)家族信託以外の制度との関係

家族信託は万能なわけではなく、家族信託をしておけば遺言、任意後見が不要になるわけではありません。信託は遺言書の代わりになる機能がありますが、これが働くのは信託した財産についてのみであり、信託していない財産についてはやはり遺言が必要になります。また、家族信託では受益者(たいていは委託者)本人の身上監護をサポートする権限はありませんので、認知症対策としては任意後見契約も用意しておく必要があります。見積もりを比較するのであれば、これらの経費も加えて全体でいくらかかるのかを比較するとよいでしょう。

(2)継続的なフォロー・メンテナンスが必要

家族信託は契約してからきちんと運用されることが大事です。実務を行う中で疑問点などは生じますから、アフターフォローも大事です。また、予想していた将来と違う事態が発生することもありえます。例えば、親よりも先に子が亡くなってしまうなどです。そのような事態にも対応できるように契約書を作成するわけですが、想定外の事態も起こりえますので、その際にも専門家に相談できるようになっていることが必要です。

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