家族信託が必要なケース・不必要なケースとは?家族信託のメリットとデメリットを理解しよう

2021/7/22

2021/08/27

この記事の監修

齊藤潔

さいとう司法書士・行政書士事務所
司法書士・行政書士・民事信託士
齊藤潔

開業以来、一貫して相続・成年後見など家族に関する法務に携わる。
家族信託や遺言など生前からの対策が必要な方への支援を行っている。

Contents

1.はじめに

家族信託は、認知症対策や空き家対策などで、優れた制度ですが、贈与契約と比べると家族信託契約はかなりボリュームが多く、新たに理解しなければならないことも多く、ある程度の費用もかかりますので誰にでもお勧めとまでは言えません。

そこで、今回は、家族信託が必要なケース、不必要なケースについて解説していきます。

2.家族信託が必要ないケース                    

(1)不動産などの財産を持っていない      

認知症対策として対策方法を考える場合、不動産の管理・処分が必要なケースでは、家族信託がベストな選択になること可能性が高いといえます。

不動産をお持ちでなければ必ず不必要というわけではありませんが、資産が預貯金のみであれば、対策方法の選択肢が広がる分、家族信託が不必要であるケースも多くなります。

例えば、信託銀行が提供している認知症サポートを目的とした信託商品は選択肢になります。これは、信託銀行にお金を預けると同時に契約者が認知知症になったときのために代理人を設定しておくことができます。家族信託のようにオーダーメイドとはいきませんが、合うかどうか検討してみるとよいでしょう。

また、不動産があっても、将来的に売却したり、賃貸したりといった活用をする可能性が全くないのであれば、家族信託をしておく必要性は乏しいといえます。

(2)年齢がまだ若く、健康である

まだ若く健康な場合は、時間的な余裕がありますので、家族信託以外の対策をすることも可能です。例えば、認知症による預貯金の凍結問題の対策として、子どもに介護資金の生前贈与をしたり、不動産管理問題の対策として、不動産を生前に売却しておくということが考えられます。

還暦になった、仕事を引退したタイミングや健康に不安を感じたタイミングに検討する人が多いように思いますが、贈与税がかからないように毎年少しずつ贈与する場合などは時間がかかりますので、時間的余裕があるうちに検討すると選択肢が広がります。

(3)財産が凍結しても問題ない

認知症になって財産が凍結されても問題ないのであれば家族信託は必要ありません。既に介護施設に入所していて、様々な支払いが自動引き落としになっているような場合などが考えられます。ただし、特別な医療行為が必要になって施設にいられなくなったりすることもありますので、そのような場合でも、いざというときに頼れるお子様がいるなど好条件の方でない限り財産が凍結しても問題ないとはいえません。

また、財産が凍結されても成年後見制度を利用すればよいという場合もあります。

(4)すでに財産の名義を子供や法人に変更している

次のケースに当てはまる場合は、既に対策済みですので、家族信託は必要ありません。

① 不動産を子どもに生前贈与して子供名義にしてある。

子供名義にしてあれば認知症による資産凍結の問題は起こりませんので、家族信託は必要ありません。

② 不動産管理会社を設立して法人名義にしてある。

法人の名義であれば、代表者が認知症になっても代表者を変更するだけでよいので、基本的には家族信託は必要ありません。

ただし、株主が一人しかいない場合などは、認知症による議決権の凍結問題があります。代表者が認知症になったときに問題なく世代交代ができるようになっているか確認してみた方がよいでしょう。問題がある場合は、家族信託も解決法の一つになります。

3.家族信託が必要なケース

(1)親の介護費用・医療費は親の財産から支払いたい場合

医療費や介護費用、老人ホーム入居費などを親の財産から支払いたい場合は、家族信託が必要になります。親の財産と子の財産をしっかり分けて管理することができます。

(2)アパート・マンション、商業ビル、駐車場など、収益が発生する物件を所有している場合

アパートなどの収益物件がある場合は、認知症などにより所有者が判断能力をなくしても財産管理を続けられるようにする必要があり、そのためには家族信託が必要となります。

不動産会社に管理を任せているから大丈夫だと考えられる方もいらっしゃいますが、所有者が判断能力をなくしてしまうと、修繕工事や賃料の不払いへの対応などの場面で支障が生じます。

(3)家族だけで財産管理を行えるようにしておきたい場合

成年後見制度もありますが、家族以外の専門職が選任されたり、監督人が選任されたりすることで、家族以外の第三者の意思が入ってしまったり、専門職の報酬が積み重なると大きな負担にもなりますので、家族信託をお勧めします。

(4)二次相続まで、財産の承継先を決めておきたい場合      

家族信託では、「後継ぎ遺贈型受益者連続信託」にすると先々の相続のことまで決めておくことができます。例えば、今の所有者(委託者兼受益者)が亡くなったら、妻が相続し(次の受益者になる)、妻がなくなったら長男が相続する(次の次の受益者になる)というようなことを決めておくことができます。これを行いたい場合は、家族信託が必要になります。

4.家族信託のメリット・デメリットを理解する                    

(1)家族信託の6つのメリット   

  • 認知症などによる資産の凍結を回避することができる
  • 本人の意向に沿った財産管理を行うことができる
  • 遺言と同じような機能がある
  • 複数の世代への資産承継を決めておくことができる
  • 不動産などの共有問題の対策になる
  • 倒産隔離機能がある

(2)家族信託の5つのデメリット             

  • 損益通算ができなくなる
  • 毎年税務署に申告をすることになる
  • 節税効果は基本的にはない
  • 長い間家族が契約に縛られることになる
  • 専門家に依頼した場合費用がかかる

メリット・デメリットについては、以下の記事にまとめてあります。

5.家族信託で困ったら専門家へ相談を                    

専門家選びのポイントと注意点は、以下の記事にまとめてあります。

6.まとめ

家族信託は、財産管理機能と遺言代替機能の両方を持つ優れた制度ですが、万能ではありません。 家族信託が必要なケース、不要なケースがあります。 遺言と家族信託を組み合わせるなど、複数の制度が必要な場合もあります。 何が最適なのかの判断は難しい場合もありますので、専門家に相談することをお勧めいたします。 本記事が皆様のお役に立てば幸いです。

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